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刑事事件

不同意性交等罪とは|成立要件・刑罰・公訴時効から逮捕後の流れ・示談・弁護活動まで名古屋の弁護士が解説【名古屋】

警察から不同意性交等の疑いで出頭を求められた、ご家族が愛知県警察に逮捕されたと連絡があった、あるいは過去の行為が罪に問われるのではないかと不安を抱えている──こうした状況では、まず「不同意性交等罪とはどのような犯罪で、これから何が起きるのか」を正確に知ることが出発点になります。2023年の刑法改正で強制性交等罪・準強制性交等罪は不同意性交等罪に改められ、成立要件も公訴時効も変わりました。この記事では、名古屋で刑事弁護を扱う当事務所の弁護士が、刑法177条の成立要件、法定刑、公訴時効、逮捕後の流れ、示談と弁護活動のポイントを現行の条文に基づいて解説します。

不同意性交等罪とは──2023年改正で強制性交等罪から何が変わったか

不同意性交等罪は刑法177条に定められた犯罪で、相手を「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にさせ、又はその状態に乗じて性交等をした場合に成立します。2023年(令和5年)の刑法改正により、強制性交等罪(暴行・脅迫を手段とするもの)と準強制性交等罪(心神喪失・抗拒不能に乗じるもの)が統合されてこの名称になり、改正法は2023年7月13日に施行されています。

改正前は、暴行・脅迫がどの程度強ければ罪になるのか、「抗拒不能」といえるのかの判断が事案ごとに分かれるという指摘がありました。改正後の条文は、相手が同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難だったかという統一的な基準を置き、その原因となる行為や事由を具体的に列挙しています。法務省は、この改正は従来処罰できなかった行為を新たに処罰対象に加えるものではなく、要件を明確化したものだと説明しています。

不同意わいせつ罪との違い

同じ改正で、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪(刑法176条)に改められました。両罪の違いは行為の内容にあり、性交・肛門性交・口腔性交や、身体の一部・物を膣や肛門に挿入する行為であれば不同意性交等罪、それ以外のわいせつな行為であれば不同意わいせつ罪です。「同意しない意思」の考え方や8つの行為・事由は共通ですが、法定刑は不同意性交等罪の方が格段に重く、罰金刑の定めもありません。

なお、不同意性交等罪は親告罪ではありません。被害者の告訴がなくても捜査・起訴は可能であり、「被害届が出ていない」ことは安心材料にはなりません。

成立要件──8つの行為・事由と「同意しない意思」

刑法177条1項は、176条1項各号に掲げる8つの行為・事由「その他これらに類する行為又は事由」により、同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせ、又はその状態に乗じて性交等をした者を、婚姻関係の有無にかかわらず処罰すると定めています。

号条文上の行為・事由典型的な場面
1号暴行若しくは脅迫を用いること、又はそれらを受けたこと押さえ付ける、危害を加えると告げる
2号心身の障害を生じさせること、又はそれがあること知的障害・精神障害のある相手に乗じる
3号アルコール若しくは薬物を摂取させること、又はそれらの影響があること飲み会で泥酔した相手との行為
4号睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、又はその状態にあること眠っている相手への行為
5号同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと不意を突いた行為
6号予想と異なる事態に直面させて恐怖させ若しくは驚愕させること、又はその事態に直面して恐怖し若しくは驚愕していること恐怖で身体が動かない状態
7号虐待に起因する心理的反応を生じさせること、又はそれがあること継続的な虐待で抵抗できない状態
8号経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること、又はそれを憂慮していること上司と部下、指導者と生徒

各号には「~させること」と「~があること(その状態に乗じること)」の両方が書かれています。自ら相手を酔わせた場合だけでなく、すでに酔って意識がはっきりしない相手の状態を利用した場合も対象です。また各号は例示であり、「これらに類する行為又は事由」も含まれますから、どの号にもぴったり当てはまらなくても成立しうる点に注意が必要です。

「性交等」の範囲

条文上の「性交等」は、性交、肛門性交、口腔性交に加え、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなものを指します。改正で後者が加わり、改正前は強制わいせつ罪にとどまっていた行為の一部が、現在は不同意性交等罪として扱われます。

誤信・人違いに乗じた場合(2項)

行為がわいせつなものではないと誤信させ、又は行為者について人違いをさせて性交等をした場合や、その状態に乗じた場合も、1項と同じ刑で処罰されます。治療や施術を装うケースが典型です。

16歳未満の者に対する行為(3項)と年齢差の要件

16歳未満の者に対して性交等をした場合は、8つの行為・事由の有無や、相手が同意していたかにかかわらず成立します。ただし相手が13歳以上16歳未満のときは、行為者がその者の生まれた日より5年以上前に生まれた者である場合に限られます。たとえば15歳の相手に対し、行為者が20歳であれば3項の対象となりえますが、17歳であれば当たりません。もっとも、年齢差が5年未満でも、立場の差や恐怖を利用していれば1項で処罰される可能性があります。

関連して、18歳未満の者を現に監護する者がその影響力に乗じた場合は監護者性交等罪(179条2項)として同じ刑で処罰され、わいせつの目的で16歳未満の者に面会を要求する行為も面会要求等罪(182条)として新設されました。

ポイント

「相手が嫌だと言わなかった」「抵抗されなかった」という事情は、同意があったことを意味しません。飲酒、睡眠、不意打ち、立場の上下など8類型に当たる状況があれば、言葉での拒絶がなくても成立する可能性があります。

法定刑──5年以上の拘禁刑と執行猶予の可能性

不同意性交等罪の法定刑は「5年以上の有期拘禁刑」です(刑法177条1項)。2025年6月に施行された改正により懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されたため、現行条文は拘禁刑で定められています。罰金刑の定めはなく、有罪となれば必ず拘禁刑の判決を受けることになります。未遂も処罰されます(180条)。

被害者を死傷させた場合は不同意性交等致死傷罪(181条2項)となり、無期又は6年以上の拘禁刑です。参考までに、不同意わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。

執行猶予はつくのか

刑の全部の執行猶予は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金を言い渡す場合に限られます(刑法25条1項)。不同意性交等罪の下限は5年ですから、そのままでは執行猶予を付けることができません。もっとも、裁判所が情状を酌量して刑を減軽する酌量減軽(66条)が認められると、有期拘禁刑の長期と短期が2分の1になり(68条3号)、下限は2年6月となります。その結果3年以下の刑が言い渡されれば執行猶予が可能です。酌量減軽の可否は、示談の成否、被害の程度、反省の状況、前科の有無などを踏まえた個別の判断で、事案により大きく異なります。

裁判員裁判・被害者参加

不同意性交等罪のみであれば裁判員裁判の対象ではなく(裁判員法2条1項)、名古屋地方裁判所では裁判官による審理となりますが、致死傷罪は無期拘禁刑を含むため裁判員裁判で審理されます。また不同意性交等罪は被害者参加制度の対象で(刑事訴訟法316条の33)、被害者やその委託を受けた弁護士が公判に出席して意見を述べることがあります。

公訴時効──15年、被害者が18歳未満なら加算

2023年改正で刑事訴訟法250条に性犯罪の公訴時効の特則が置かれ、不同意性交等罪(未遂を含む)の公訴時効は15年とされました。改正前の10年から5年延長されたものです。人を負傷させた場合(181条)は20年、不同意わいせつ罪は12年です。

さらに、被害者が犯罪行為の終わった時に18歳未満であった場合は、その時から被害者が18歳に達する日までの期間が時効期間に加算されます(同条4項)。法務省は、12歳のときに被害を受けた方について33歳に達する日まで時効が完成しないという例を示しています。「何年も前のことだから捜査されない」とは限りません。

逮捕から起訴までの流れと名古屋での実務

不同意性交等の事件は、被害申告を受けた愛知県警察の警察署が証拠を集め、逮捕状により突然逮捕される形で始まることが少なくありません。面識のある相手との事件では、先に任意の取調べへの出頭を求められることもあります。逮捕後の時間制限は刑事訴訟法で厳格に決まっています。

段階期限内容
警察での取調べ逮捕から48時間以内弁解の機会を与え、留置の必要があれば検察官へ送致(203条)
検察官の判断送致から24時間以内・逮捕から72時間以内勾留を請求するか釈放するか(205条)
勾留原則10日・最長20日裁判官が勾留を判断。取調べが続き、期間内に起訴・不起訴が決まる(208条)
起訴後判決まで名古屋地方裁判所で公判。保釈請求が可能になる

逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間は、ご家族であっても面会できません。立会人なしで本人と接見できるのは弁護人だけです(刑事訴訟法39条1項)。性犯罪では、被害者との接触や証拠隠滅のおそれを理由に勾留が認められやすく、接見禁止が付くことも珍しくありません。逮捕直後の流れとご家族ができることは家族が逮捕されたら最初にすべきことで詳しく解説しています。

起訴後の保釈

不同意性交等罪は短期1年以上の拘禁刑に当たる罪ですから、刑事訴訟法89条1号により権利保釈(請求があれば原則として許さなければならない保釈)の対象から外れ、保釈は裁判所の裁量に委ねられます。身元引受人の存在、被害者と接触しないことの誓約、示談の状況などを具体的に示して請求する必要があります。

名古屋での弁護士へのアクセス

名古屋市内や愛知県内の警察署に留置されている場合、ご本人やご家族が愛知県弁護士会(名古屋市中区三の丸1-4-2)に申し込めば、当番弁護士が1回に限り接見に来る制度があります。ただし、早期の釈放や示談に向けて継続的に動いてもらうには私選弁護人への依頼が必要です。当事務所は名古屋市中区栄にあり、愛知県警察の各警察署への接見、名古屋地方検察庁や名古屋地方裁判所への意見書の提出に速やかに対応しています。詳しくは刑事事件・少年事件のページをご覧ください。

示談・被害者対応の留意点と不起訴の可能性

事実に争いがない事件で最も重要なのは、被害者への謝罪と被害弁償、すなわち示談です。検察官が起訴・不起訴を決めるにあたり、被害が回復され、被害者が処罰を望んでいないという事情は重視されます。示談が成立すれば必ず不起訴になるわけではありませんが、起訴猶予の可能性を高めるうえで最も効果の大きい手段です。不起訴の種類と判断要素は不起訴処分とはをご覧ください。

被害者への直接の連絡は絶対に避ける

性犯罪の被害者の多くは、加害者側からの直接の連絡を強く拒みます。謝罪のつもりでも、本人やご家族が被害者に連絡を取ったり自宅や職場を訪ねたりすれば、被害者を畏怖させる行為や証拠隠滅と評価され、勾留や接見禁止、保釈却下の理由になりかねません。被害者の連絡先は、弁護人が被害者の同意を得たうえで検察官や警察を通じて開示を受けるのが通常です。示談交渉は必ず弁護士を窓口として進めてください。

示談金の目安と示談書の内容

示談金の額は、行為の内容、被害の程度、被害者の処罰感情、行為者の資力などによって大きく異なり、一律の相場はありません。一般的な目安としては数十万円から数百万円の幅で合意に至ることが多いものの、治療費や休業損害が加わればさらに高額になることもあります。示談書には、被害弁償の内容のほか、処罰を望まない意思(宥恕)、被害者やそのご家族への接触禁止、口外禁止などを盛り込むのが通常です。被害者が示談に応じない場合には、贖罪寄付や供託によって被害回復の意思を示す方法も検討します。起訴後も示談の成立は量刑に大きく影響し、再犯防止のための治療やご家族の監督体制とあわせて、酌量減軽と執行猶予を求める材料になります。

ポイント

示談は「弁護士を通じて」「できるだけ早く」が鉄則です。勾留中の限られた期間に被害者側の意向を確認し、条件を調整して合意に至るには、逮捕直後から弁護人が動く必要があります。

否認事件の弁護活動と証拠

「性交等そのものがなかった」「相手は同意していた」と争う事件では、密室での出来事であることが多く、被害者の供述の信用性が最大の争点になります。弁護人は、供述に変遷や不自然な点がないか、客観的な証拠と整合しているかを徹底して検討します。

確保すべき証拠の例

  • 当日前後のメッセージやSNSのやり取り、通話履歴(事件の後も友好的な関係が続いていたか)
  • 店舗・ホテル・駅などの防犯カメラ映像(保存期間が短いため早期の保全が必要)
  • 飲食店の会計記録や交通系ICカードの履歴などの行動記録
  • 同席していた友人など第三者の供述

取調べでの対応

否認事件では、取調べへの対応が結果を左右します。記憶と異なる内容の供述調書に署名・押印しないこと、曖昧な記憶を断定的に語らないこと、黙秘権の行使を含めて弁護人と方針を決めてから取調べに臨むことが重要です。一度作成された調書を後から覆すことは非常に困難です。

「同意があると思っていた」という主張の位置づけ

不同意性交等罪が成立するには、相手が同意しない意思の形成等が困難な状態にあったことに加え、行為者がその状況を認識していたことが必要です。したがって「同意があると信じていた」という主張では、客観的な状況からそう信じることに相当な理由があったかが問われ、相手が泥酔していた、立場の上下が明らかであったといった事情があると通りにくくなります。客観証拠との整合性を踏まえて弁護士と慎重に検討する必要があります。

不起訴の可能性

証拠が十分でなければ、検察官は嫌疑不十分として不起訴にします。弁護人が早い段階で客観証拠と意見書を検察官に提出することが不起訴につながることがあります。

よくある質問(FAQ)

相手が「嫌だ」と言わなかったのに、不同意性交等罪になることはありますか?
あります。刑法177条は、相手が同意しない意思を形成し、表明し、又は全うすることが困難な状態だったかを問題にしており、言葉で拒否したかどうかだけで決まるものではありません。恐怖で声が出せなかった、酔って意識がはっきりしなかった、立場上断れなかったといった事情があれば成立する可能性があります。
交際相手や配偶者との性交でも不同意性交等罪は成立しますか?
成立します。2023年の改正で、不同意性交等罪は「婚姻関係の有無にかかわらず」成立することが条文に明記されました。交際や夫婦という関係があることは、その場面で相手が同意していたことの証明にはなりません。
不同意性交等罪で逮捕されたら、いつまで身柄を拘束されますか?
逮捕から最大72時間以内に検察官が勾留を請求するかどうかを判断し、勾留されると原則10日、延長されると最長20日間、起訴前の拘束が続きます。不同意性交等罪は権利保釈の対象外のため、起訴後の保釈は裁判所の裁量判断になります。
不同意性交等罪の公訴時効は何年ですか?
不同意性交等罪の公訴時効は15年です(刑事訴訟法250条3項)。被害者を負傷させた場合は20年になります。被害者が犯罪行為の終わった時に18歳未満であった場合は、18歳に達する日までの期間が加算されます。
被害者と示談すれば不起訴になりますか?示談金の目安はいくらですか?
示談が成立しても必ず不起訴になるわけではありませんが、被害が回復され処罰を望まない意思が示されていることは、検察官の判断で重視されます。示談金は行為の内容や被害の程度により大きく異なり、一般的な目安として数十万円から数百万円の幅になることが多いです。
不同意性交等罪で起訴された場合、執行猶予はつきますか?
法定刑は5年以上の有期拘禁刑ですが、裁判所が酌量減軽を認めると下限は2年6月となり、3年以下の刑の言渡しであれば執行猶予を付けることが可能です。示談の成立、反省の状況、前科の有無などが考慮され、事案により結論は大きく異なります。

まとめ

  • 不同意性交等罪(刑法177条)は、2023年7月13日施行の改正で強制性交等罪・準強制性交等罪を統合した罪で、「同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態」が要件です。
  • 暴行・脅迫のほか、飲酒、睡眠、不意打ち、地位関係に基づく影響力など8つの行為・事由が列挙され、16歳未満の者への性交等は同意の有無を問わず処罰されます。
  • 法定刑は5年以上の有期拘禁刑で罰金刑はなく、執行猶予には酌量減軽が必要です。公訴時効は15年で、被害者が18歳未満の間は加算されます。
  • 示談は必ず弁護士を通じて早期に進め、否認事件では初動の証拠確保と取調べ対応が結果を左右します。

性犯罪の疑いをかけられた状況は、誰にも相談しにくいものです。しかし、逮捕前・逮捕直後の対応で結果は大きく変わります。越水法律事務所 名古屋オフィスでは、名古屋市内・愛知県内の警察署への接見、被害者との示談交渉、否認事件の弁護まで一貫して対応します。お問い合わせフォームまたは050-8886-6507までご連絡ください。

参考(一次情報)
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この記事の執筆者
弁護士 鈴木 隆史越水法律事務所 名古屋オフィス パートナー弁護士/愛知県弁護士会

名古屋市役所で14年間、債権回収・税務・生活保護の現場に携わった後、弁護士に転身。離婚・相続・債務整理・刑事事件などの身近な法律問題から、中部圏の企業法務まで幅広く対応しています。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的なご事情については弁護士にご相談ください。

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